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PCR検査について

PCR検査について

 

竹林 直紀
10月18日
PCR検査は、人工的に合成した短いDNA断片(プライマー)を使用して、ウィルスRNAの一部から作られたDNA鋳型を使い、何回もコピーを繰り返すことで検知できる量にまで増幅します。従って、理論上はウィルスのRNA断片が一つでもあれば、コピーを繰り返すことで検知可能な量にまで増やすことができるのです。
この検知可能な量に到達するまでのコピー回数をCt値(Threshold Cycle)と言います。コピー回数が増えるに従って指数関数的に急激に量が増幅されるため、最初のウィルスのRNA断片の量が多いほどCt値は低くなります。この検査はウィルスのRNAの一部を検出しているに過ぎないので、ウィルス活性(感染性)があるかどうかはわかりません。
ウィルスの感染性を検査するためには、生きている細胞を使って培養する必要があります。感染性がある活性ウィルスであれば、その細胞を利用して増殖していきます。感染性のない不活性ウィルスや免疫細胞により破壊されたウィルスのRNA断片であれば、培養しても増殖しません。
PCR検査陽性者が実際に感染しているのかどうかは、その同じ検体を培養してウィルスの増殖の有無を確認しないと実際にはわかりません。これまでPCR検査のCt値とウィルス培養結果を比較したいくつかの研究報告があります。これらの結果からは、PCR陽性者のCt値とウィルスの培養結果の間に一定の相関が認められています。
フランスのマルセイユにあるメディテラネ感染症大学病院研究所と、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学病理学教室医微生物学部門から報告されているCt値とウィルス培養結果のグラフを、分かり易いように日本語に修正して罫線や枠、コメントなどを追加してみました。
フランスの研究所のグラフからは、Ct値30前後のPCR陽性者は、約半分が感染力のない不活性ウィルスのようです。またCt値が34以上でのPCR陽性者は、ほぼ100%感染力のない不活性ウィルスです。米国のジョンズ・ホプキンス大学のグラフも、Ct値が30以上はほぼ感染性のないウィルスのRNA断片を検出しているようです。
Ct値がどのレベルまでを陽性と判定するのかという基準は、国によっても決まっておらず検査施設ごとにおいても統一されていません。台湾と日本とアメリカとスウェーデンの4ヵ国のPCR陽性判定のCt値の比較では、台湾が35と一番低く日本が40~45?と最も高い数値となっています。この中では台湾が最も妥当な基準値であり、感染症対策も現実に即して効果的に実施されたと考えられます。
欧米を中心に第2波?と言われる感染拡大が現在報道されていますが、各国の死者数の推移を見る限り、検査件数の増加によるケース・デミック状態であり、大部分が免疫を獲得している既感染者の再暴露によると思われます。無症状や軽症者へのPCR検査を行う場合は、結果のCt値も合わせて報告しないと無意味であり、社会的混乱を招くだけではないでしょうか。


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